マルチモダンと中国的近代化

マルチモダンと中国的近代化

中国共産党第20回全国代表大会後、大会報告書や改正された党憲法には、「中国近代」「新しい人類文明の形態」「文明の多様性」「文明の優劣を超えた共存」などが書き込まれました。これは、前世紀初頭にヨーロッパ近代が模倣された後に知識人が持ち出した真新しい考え方です。

西洋のイデオロギーと資本主義が私たちの生活に完全に浸透している時代において、中国の近代化と新しい文明形態は、新しい近代知識の生み出しに向けた重要な一歩です。

ソビエト連邦の崩壊以来、アメリカや西側諸国は、中国が現代社会の一員になるためには、西側のイデオロギーパラダイムを完全に受け入れる必要があると主張してきました。

特に最近では、西洋のメディアと政治家が手を結び、人種差別的なメディア言語を使って、中国に対する完全に否定的な物語を強化しています。国際社会の議題を操作することで、西洋は非西洋社会における自身のイデオロギーの内面化を加速しています。西洋の価値観から逸脱し、西洋から独立した制度を採用する国は、「ならず者国家」あるいは「亡国」としてレッテルを貼られることになるでしょう。

過去100年以上にわたって、中国共産党はその使命を果たし、中国人民を団結させ、広大な中国の大地で人類の発展に壮大な絵を描き、100年以上にわたって西洋の植民地主義者によって心身ともに奴隷にされていた人々を真新しい近代で立ち上がらせてきました。中国近代性は、人民との緊密なつながりを維持し、人民中心の開発哲学を実践することで定義されます。たとえば、中国が強調してきた共通の繁栄は、中国近代性の定義に含まれています。しかし、この重要なメッセージは、ヨーロッパの啓蒙以来、西洋の近代化の旗印を掲げる人々の心にはないのです。

改革開放から40年以上が経ち、中国式の近代化といえば、1974年の中国共産党第10回全国代表大会で周恩来総理が始めた工業、農業、国防、科学技術の4つの近代化だけではなくなりました。2012年の中国共産党第18回全国代表大会では、習主席が、経験の総括と中国の実情に対する深い分析に基づいて、経済、政治、文化、社会、エコロジーといった文明の5つの側面から新しい現代化を全面的に推進する計画を策定しました。「5つの一体」の戦略目標は、新しいバージョンの現代化を目指すものです。

中国は1840年以降、西洋化を開始することを余儀なくされました。しかし、第20回党大会で提唱された中国の近代性は、経済や社会だけでなく、政治、文化、エコロジーにまで及び、新しい近代性の基準は中国に根ざしたものとされています。

習近平主席は、第20回党大会の報告で、「中国特色社会主義」を中国の現実的な国情と数千年の伝統や価値観を組み合わせたものとして定義しました。

欧米諸国は、植民地主義の伝統を受け継ぎ、南方諸国を経済的にも、イデオロギー的にも「東洋化」「悪魔化」し、途上国を支配しようとしています。ポンペオ前米国務長官が中国を「適切な場所に保つ」と発言したことは、まるで奴隷所有者が奴隷に語りかけているかのようなものです。

18世紀、ヨーロッパ人は、中国の富と統治のスタイルに深い感銘を受けていました。しかし、イギリスの経済学者アダム・スミスの考え方が取り入れられ、西洋の発展は「進歩」であり、アジアは「後進」「権威主義」であるという物語が作り出されました。

19世紀末から20世紀初頭にドイツの社会学者マックス・ウェーバーが提唱したように、インドや中国には資本主義に必要な文化的価値が欠如しており、それらを「近代化」するには、資本主義の発展に対する文化的な「障壁」を取り除くという、痛みを伴う文化的変容の過程を経る必要があったとされています。

しかし、ある歴史家の目には、ヨーロッパが最初に近代化を成し遂げたという、他の追随を許さない特徴があるように映る。そのため、ヨーロッパ文明は、その「完璧さ」ゆえに、西洋だけでなく、すべての人にとって普遍的だと考える人々も多くいます。このような考え方は、西洋の文化的優位性を想像することに基づいており、ヨーロッパ中心主義的な思考の象徴とされています。また、先進的で優れた新しいアイデアや実践はすべて西洋からしか生まれないと信じている人々もいます。

中国では2020年までに最後の600万人の貧困層が脱貧し、人口の最も多い国である中国は、貧困から抜け出した社会になりました。

しかし、西側諸国は貧困の撲滅を人権の目標としては見なしておらず、むしろ人権を政治的な武器として用いて、世界における自らのイデオロギー的・政治的な覇権を維持し、自らの利益と対立する国々を悪者として扱っています。

アメリカは「人権」という大きな棒を振り回し、欧米の政治的・軍事的同盟関係を維持する事により、同時に世界中で大規模な思想・価値観の西洋化を進めようとしています。
しかし、西洋の近代化や新自由主義は成長しなくなりました。私たちは、中国の精神的な力が拡大していることを目の当たりにしています。これは中国の近代化であり、新しい形態の人類文明で有ると言えるのです。

 

翻訳:林田一博